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人種差別地図よりその元データの方が面白い

written by ultraviolet on

先週、国別の人種差別の激しさを世界地図にプロットしたと称する A fascinating map of the world’s most and least racially tolerant countries という記事が Washington Post に載り、世界中で大いに騒がれました。日本でも 極東ブログ などで取り上げられとります。

しかしこの人種差別地図、World Values Survey という大きな調査結果の本当に一部だけを切り出してきたもので、その扱い方には結構注意が必要です。「日本は青くてインドが赤いから日本の方が人種差別が小さい」などと単純な結論を出せるようなもんじゃあないです。
つうか、実はこの元データである World Values Survey 結果をまじめに読み解くと、人種差別地図よりも圧倒的に面白いんです。今日はその一部をご紹介…

データの性質

そもそもの話ですが、この人種差別地図の元データとなった World Values Survey — 日本語では「世界価値観調査」と訳されますが、その説明から行きましょう。

詳しい説明は Wikipedia にあるんで読んどいて。で終わってしまう話ではあるんですが、だいたい五年間隔ぐらいで行われている国際的な調査です。

ただ、Wikipedia では「質問票・調査方法をそろえて実行される」と書いてあるんですが、実際に結果を見てみると、質問項目や選択肢に各国毎のバラつきがあります。
特に、今回問題になった「異なる人種の人が近所に住んでいても良いか」という質問は、日本の調査に含まれたのは1990年が最後で、以降の調査では質問されていません。なぜ質問項目からこれが落とされたのかは明らかにされていません。他の大半の国では2005年回でもこの質問が行われており、人種差別地図もその最新のデータをもとにプロットされています。日本だけが20年以上昔のデータでプロットされている、ということは注意しておいてください。バブル末期の、まだ日本が経済的にイケイケだった頃のデータですね。
ちなみに日本の次に古いのは、ベラルーシ/ラトヴィア/クロアチア/ドミニカ共和国/エストニアの1996年です。

調査結果データは Integrated EVS/WVS 1981-2008 Variables として誰でも無料で閲覧できます。

隣に住んで欲しくない人

WVSでは、「異なる人種」以外にも「隣に住んで欲しくない人」をいろいろ質問しています。なかなか興味深い結果が出ています。

まず日本の結果。データが1981年と1990年の二つしかなく、バブル前とバブル末期という感じですか。これを見ると、イスラム教徒/ユダヤ教徒/ヒンズー教徒に住んで欲しくないと言う人が30%近くに達していますね (これは韓国での2005年の調査で「異なる人種の人に隣に住んで欲しくない」と回答した人に近い数値です)。
日本人の間では、異なる人種に対する忌諱よりも、異なる宗教に対する忌諱が強い という感覚的には納得できる結果が出ているように思えますな。これ2010年代の結果も調査して欲しいよなー。

隣に住んで欲しくない人: 日本
項目 1981 1990
犯罪歴のある人 41.4 49.7
異なる人種の人 9.1 10.6
大酒飲み 52.9 58.3
感情的に不安定な人 54.0 61.8
イスラム教徒 - 28.8
移民/外国人労働者 6.9 16.6
AIDS患者 76.6
麻薬常習者 90.8
同性愛者 68.5
ユダヤ教徒 28.1
過激派 64.7
極左 77.4
極右 79.0
大家族 5.7
ヒンズー教徒 27.7

他の国々

同じ項目について、アメリカ合衆国の結果も見てみましょう。

質問内容が年によって異なる点についてはいろいろ疑問もあり、2006年はなんで「イスラム教徒」が選択肢から無くなっちゃったの? それこそキモだろうが! と思わんでもないですが、まあ言っても仕方ないことですね。

アメリカでは、人種差別は小さいことになっていて、宗教についても日本より小さいものの、移民や非英語話者の問題が相対的に大きくなっていると見て取れます。

AIDS患者および同性愛者に対する不寛容さが下がってきているのは興味深いところです。日本も1990年時点では76.6%, 68.5%とアメリカ以上の不寛容ぶりでしたが、2013年ともなればアメリカ同様下がっていると期待できるでしょうか。

隣に住んで欲しくない人: アメリカ
1981 1982 1990 1995 1999 2006
犯罪歴のある人 41.4 47.5 49.7 60.9 53.8
異なる人種 9.1 7.7 8.7 6.6 8 4.1
大酒飲み 52.9 55.8 59 63 55.7 72.9
感情的に不安定な人 54 43.6 49.4 51.4 51.5
イスラム教徒 19 12.3 10.7
移民/外国人労働者 6.9 8 12.2 9.7 10.1 13.2
AIDS患者 45.2 18.6 16.8 15.9
麻薬常習者 83 82.8 73.7 93.8
同性愛者 49.2 29.5 23.3 26
ユダヤ教徒 13.2 9.1
過激派 64.7 33.2
極左 29.8 47.4
極右 23.2 47.8
大家族 7.1 7.3
ヒンズー教徒 14.4
学生 2.5
シングルマザー 4.1
新興宗教/カルト 21.9
異なる宗教 2.6
未婚同棲カップル 8.4
異なる言語の人 11.1
武装マイノリティ 14.8

人種差別的とされたインドと大韓民国についても見てみましょう。2005年の結果です。

うーんこれは… すべてに渡って基本的に高い… 人種差別的と言うより「全てにわたって気に食わん!」とかなんかそういう何かを感じます。だいたい、インドの「自分と同じ宗教の人」が41.8%ってどういうことですか! 「移民/外国人労働者」より多い! 何か根本的なところに違いがあるような…

隣に住んで欲しくない人: 韓国とインド
韓国 インド
麻薬常習者 98.7 60.3
異なる人種 36.4 48.8
AIDS患者 93.6 48.9
移民/外国労働者 38.5 39.2
同性愛者 87.1 45.2
異なる宗教 26.2 49.2
同じ宗教 41.8
大酒飲み 76.0 54.3
未婚同棲カップル 47.9 47.8
異なる言語 31.9 44.6
武装マイノリティ 88.6 43.7

韓国についてさらに詳しく見てみましょう。年ごとの変化です。

…ずいぶん毎回の差が激しいですな。「感情的に不安定な人」の項目など、アンケート回答者の方が感情的に不安定なんじゃないかっつう疑問さえ。標本抽出が適正だったかとかその辺を見直してみた方がいいんじゃないですかねえ…

大家族に対する不寛容ぶりにも目を惹かれますが、一回だけしか調査されてないし、本当に信用できる結果なのか何とも言えんなあという気がしています。

隣に住んで欲しくない人: 韓国 (1982~2005)
1982 1990 1996 2001 2005
犯罪暦のある人 50.2 30.9 18.1 81.4
異なる人種 14.3 57.9 34.7 36.4
大酒飲み 55.9 16.6 16.4 75.6 76.0
感情的に不安定な人 5.8 17.3 8.9 88.6
イスラム教徒 25.9 20.9 57.3
移民/外国人労働者 3.7 53.4 38.5 46.8
AIDS患者 4.2 5.3 89.4 93.6
麻薬常習者 4.2 2.0 93.4 98.7
同性愛者 4.2 82.4 87.1
極左 18.1
極右 27.3
大家族 79.4

面白い選択肢

この「隣に住んで欲しくない人」の選択肢は国によってかなり違い、お国柄というものが出ています。いくつかピックアップしてみました。こういう人が嫌われてるんですねえ…

選択肢 割合
福音主義者 メキシコ、グァテマラ メキシコで23%
ゾロアスター教徒 イラン 14.8%
ジプシー/ロマ イタリア、チェコ、ハンガリーなど イタリアで73%
麻薬業者 コロンビア、モロッコ コロンビアで48%
ウィッチドクター タンザニア 76%
ロシア人 フィンランド 23%
クウェート人 イラク 54.9%

その他の質問

他に日本関連で目を惹かれた項目をいくつか。

死は不可避である (Death is inevitable) という質問が、日本人だけ Agree の回答が妙に低い、ということに気がつきました。Agree が 39.1% なんですが、これが 50% を下回るのは日本人だけです。じゃあ Disagree が多いのかと言うとそういうわけでもない、Neither と Don’t Know が合わせて40%超、という構図。輪廻思想の影響? とも思ったんですが、インド人でも Agree が77.9%なんですよね。ちょっと不思議。
これに引っ張られてだと思うんですが、死は自然な安らぎである (Death is natural resting point) も日本人だけ低くなっています。

同様に日本だけ Agree の回答が低い項目として、配偶者と性的志向を共有する (Sharing with partner: sexual attitudes) が。日本は20.6%で、次に低いメキシコの39.5%の約半分。でも実はもっと意外だったのが、Agree の高い国。アルゼンチン(62.5%)よりもブラジル(57.2%)よりもスペイン(65.1%)よりも、スイスが高い(66.9%)んすよ。

良い結婚生活のためには家事分担が重要である (Important for succesful marriage: Sharing household chores) も日本低いっすねえー。Very Important が10%、Rather Important が51.4%、Not Very Important が37.0% という分布。Very Important が30%切るのも、Not Very Important が30%超えるのも、日本だけです。まあ予想通りと言えば予想通り。

結婚に重要なことでもう一つ。良い結婚生活のためには姑などから距離を置くことが重要である: (Important for succesful marriage: Apart from in-laws) という面白い項目があって、これはアジアvsそれ以外の差が如実に出てますね。日本・中国・韓国・インドはこれが低く、他の国は軒並み高い。

他にもいろいろ面白い項目が目白押しなんで、是非みなさまご自分でお確かめを。


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