この件について コンテンツ自体に未来が無い という私の考えはいささかの揺るぎも無く、そのため著作権違反コンテンツのダウンロードが違法化されても私は何ら困らない。これは実質的に利害関係が無い立場と見なせるかと思う。そのような中立的な立場から、今回のこの ダウンロード違法化 について、考えたことを述べてみたい。
小寺信良氏は ASCII.jp に掲載された ダウンロード違法化はついに何かの引き金を引いた との記事の中で、「権利者が狙うように、またみんなが一生懸命DVDやCDを買うようになるなどというのは、幻想だ」と述べている。日本人のうちこの問題に関心を持っている人の圧倒的大多数も同じことを考えているだろう。私もこの文章のうち、「権利者が狙うように」を除いた後半部分には同意する
なぜ最初の節を除いたかと言うと、権利者がそのような幻想を抱いているとは私には思えないためだ。ダウンロード違法化によってコンテンツ売上や著作権使用料が伸びるといった甘い考えは誰も考えていないだろう。いくら権利者と言えどそこまで馬鹿ではない。
ではなぜ権利者はダウンロード違法化を望んだのか。その心理メカニズムを私は以下のように推測している。
- 現状でコンテンツ売上が減っているという認識がまずある
- 売上減少について自分達権利者が一方的に被害者であるという認識もある
- ダウンロード違法化によっても売上が増加に転じるとは考えていない
- しかしこのままでは自分達が一方的に被害を受け続けるだけであり、何もしなければ座して死を待つだけ、何か手を打たなければとの焦りもある
- そこから、自分達だけ一方的に被害を受けるのは許せない、ならばいっそ利用者も共連れに、との意識に至る
- ダウンロード違法化によって利用者側の利便性が低下することも認識しているが、現状で自分達が一方的に被害を受けているという意識から、「自分達が100損をするところ90の損で済むなら(相対的に10得するなら)、その代償として利用者が100損しようと、むしろその方が公平に近づく」とでも言うような考え方を持っている
- 実際にダウンロード違法化が施行され、やはりコンテンツ売上が減少し続けた後に権利者が出すコメントは、「違法化しなければもっと激しく売上が減っていた、違法化したからこの程度で済んだのだ」
これはある意味テロリストの思想と似ている。自分達が虐げられた弱者であるという被害者意識があり、それを埋め合わせるためなら恵まれたものが犠牲になっても当然、国全体としてマイナスになっても当然、という考え方である。権利者は自分のことを、強欲な金持ちではなく、かわいそうな弱者だと認識しているのだ。このように私は分析している。こう考えると、私的録音録画小委員会で権利者側がとんちんかんな発言を繰り返す理由も説明できる。
もちろん利用者は利用者で、自分達こそが権利者の横暴に虐げられている被害者だ、との認識を持っている。しかし一旦「自分達こそ被害者」という意識に凝り固まってしまった権利者は、相手も被害者であることに思いが至らなくなる。被害者は「お前は加害者でもある」と言われると逆上するものである。
このような被害者意識によって思考が硬直化して対立が悪化する現象は、なにも著作権問題に限ったことではなく、日本ではおよそ社会のあらゆるところで見られる話である。政治家も官僚もマスコミも、教師も生徒も親も、医師も患者も、経営者も労組も派遣社員も、男性も女性も、そしてもちろんネット住人も、皆が「自分達こそ被害者」と考えている。
ただ、この権利者の抱える被害者意識は、その中でもかなり豪快な部類に属するものかと思う。被害者意識というものがいかに醜いかを見る絶好のサンプルでもあり、以って他山の石とすることで活用できるのではないかと期待している。
さて、上記のような私の推測が当たっていた場合、利用者側から権利者側を説得して歩み寄り点を探すには、どうしたらよいだろうか。
「ダウンロード違法化によってコンテンツ売上はむしろ下がる」と当たり前のことを力説したところで、それでは説得にならないだろう。そんなことは権利者側も内心では重々承知しているはずだ。かえって態度を硬化させると予想される。
根本的な原因は権利者側の抱える被害者意識であり、これを解消することが必要になるだろう。これは論理と言うより感情の問題なので非常に困難なのだが、可能性が全く無いわけでもない。
最も手っ取り早いのは、共通の敵を用意することである。権利者と利用者の両方に同じ被害をもたらすような共通の敵が現れれば、「同じ被害者同士」として連帯感が生まれ、協力し合うことも可能となる。
残念ながら、現状の著作権を巡る対立の構図に対しては、そうした共通の敵を私では思いつけない。また、仮に思いつけたとしても、その共通の敵のもたらす被害によって現状よりさらに悲惨な状況が発生する恐れもある。なかなかに難しい。
誰か、良いアイデアが無いだろうか。

