ダガー(dagger)と言えばほとんどのRPGで最弱の武器として扱われている。ファンタジー系RPGはもちろんのこと、クトゥルフの呼び声ですら1d4しかダメージが無い。ダガーを首に突きつけられたPCが「最大ダメージ4しかないダガーでHP8の俺が死ぬわけがない」と嘯く話は旧D&Dの古典的ジョークとして知られている。
そのダガーが銃刀法で規制されるという話が浮上しているらしい。例えば読売新聞には以下のような興味深い記事が掲載されている。
東京・秋葉原の無差別殺傷事件で使われた「ダガーナイフ」は、人気ゲームで主人公が使う武器として登場するなど、若者の人気アイテム。
もともと戦闘用に開発されたこともあって殺傷能力は高いが、現在の銃刀法では所持しているだけでは罰することができない。今回の事件を機に、警察庁は「実効性ある対策が必要」として銃刀法改正も視野に入れ検討を始めた。
ダガーが人気とは時代も変わったものだ。マンチキンを絶滅危惧種に指定して保護すべきかもしれない。
冗談はさておき、話題のダガーナイフ/サバイバルナイフが本当に規制されるかどうかは何ともわからないが、もし本当に規制が実行されるとしたら、規制対象としてダガーナイフが選ばれた経緯は想像できる。一番当たり障りがないためだ。
今回のように大きく騒がれる事件が発生してしまった場合、マコトをカタチで示さなければならない のが日本社会であるため、お上としては何もしないと言うわけにいかない。
しかし実際のところ実効性のある対策を打つことは極めて困難である。お上もそれはわかっている。わかってはいるが何もしないわけにいかない。下手な対策を打つと世の中にとって迷惑になる。そこで窮余の策として、「カタチは保ちつつも世間的にあまり悪影響の無い対策」を消去法で選び、実行することになる。
なんて馬鹿げた、と思うかもしれないが、お上だけが馬鹿なわけではない。このような行動パターンは民間企業でもごく普通に見られる。馬鹿な対策を打つ方も本音では馬鹿だとわかってはいるのだ。
今回の事件についても、ダガーナイフを規制したところで包丁を規制しなければ同じことだ。トラックを規制すべし、という指摘も全く正しい。なのだが、包丁やトラックを規制すれば日本人の大多数が甚大な迷惑を蒙ることになる。そんなことはいくらお上でもおいそれとできない。
その点ダガーナイフであれば、規制しても影響はかなり小さい。実際どうやるかは私にもわからないが、ダガーナイフだけを規制して包丁は規制されないような形で実行されるだろう。そういった小細工をうまく行って世間にあまり迷惑がかからないようにすることこそ、優秀な官吏に求められる能力である。
今回のような非合理的な規制に際して、その非合理性を指摘しても、規制を撤回させる上ではあまり効果が無い。何故なら、日本社会の意思決定メカニズム自体が上述のとおり非合理的なのだから。「そんなことは百も承知だが、世の中ってのは理屈で回るわけじゃない」が役人の本音であろう。
もし、そのような規制がどうしても困るということであれば、うまく根回しして、例えばカタチとしては規制させつつ実効的にはザル法で骨抜きな状態に持っていく、というのが古来よりの日本的解決法である。「カタチは保った」ことでお上/政治家の顔を立てることがポイントだろう。日本ではそれが「政治」と呼ばれる(英語圏におけるpoliticsとは概念として大きく異なる)。日本の圧力団体は総じてそういったノウハウに長けている。
なお、「影響が小さい」と見るかどうかはお上の主観に左右される。特定のセクタに甚大な被害をもたらすような規制であっても、お上の目には「無視できる」と映ることもある。例えばアニメファンのセクタは多くの政治家から無視して良い対象だと見られているフシがある。そしてそれはおそらく、そういったセクタが上記のような日本政治のノウハウに疎いことと無関係であるまい。


June 15th, 2008 at 0:33
秋葉原無差別殺傷事件の原因?…
「家庭が悪い」だの「社会が悪い」だの、問題を拡散するのもほどほどにすべきである。悪いのは本人だ。教育や派遣労働の問題は今回の事件とは別に論じるべきである。…
October 22nd, 2008 at 16:35
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