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昆虫同士の情報戦

written by nakanohito on

Science Daily に Insects Use Plants Like A Telephone という記事が掲載されています。昆虫が植物の茎を電話線のように使って通信している、というタイトルです。
実際この記事を読んでみると、電話線のような通信というのはちょっと違うのではないかという気もしますが、タイトルから想像した以上に面白い内容だったので、紹介します。

通信しているのは、土の中に住んでいて植物の根に寄生する昆虫(セミの幼虫などでしょうか)と、葉を食べるイモムシなどの昆虫です。通信手段はフェロモンのような化学物質になります。
例えば草の根に寄生する昆虫は、草の根にとりつくと、根から汁を吸う一方で、特殊なフェロモンを根に注入するのだそうです。このフェロモンは、この草にはもう先客がいるぞ というシグナルになります。このフェロモンは、葉も含めて草全体に周ります。草の葉を食べるような昆虫は、このフェロモンの味がするような葉の草は避けるのだそうです。イモムシの場合は、蝶や蛾がそういった草への産卵を避けるということになるんでしょう。フェロモンは蒸散を通じて空気中にも放出されるようです。
逆に葉を食べる昆虫の場合も同様で、先にイモムシがたかっている草の場合は、根に寄生する昆虫があまりやってこないそうです。

このフェロモンを発見したオランダの Roxina Soler さん(おそらく大学院生)によりますと、この通信メカニズムによって昆虫は競争を回避しているのではないか、とのことです。同じ植物に根を齧る昆虫と葉を食べる昆虫の両方が寄生すると、植物も枯れて共倒れとなってしまう危険があります。その競争を回避して、植物を生かさず殺さず搾取しようという、そういう生存戦略が複数の昆虫の間で共進化したと考えられます。

しかしただの協調戦略だけとも限らない様子で、と言うのも地中側の昆虫には 寄生バチを呼ぶ という切り札があるらしいのです。
根に寄生する昆虫の中には、寄生バチを呼ぶフェロモンを出せる種類もあるそうです。イモムシがいることを察知したこの昆虫は、寄生バチフェロモンを根に注入します。するとそのフェロモンが木全体に回って、葉から蒸散によって大気中に放出され、それに引き寄せられて寄生バチがやってくるのだそうです。これでライバルを駆逐するわけですね。
そうすると、逆に葉を食べる側の昆虫には対抗手段が無いのか、例えばモグラを召喚するとか、いろいろ想像も膨らみますが、この分野はまだ研究が始まったばかりで、よくわかっていないことの方が多いようです。

いずれにせよなかなか興味深い話です。例えば昆虫が交尾する際のように同じ種の間でフェロモンを使って通信が行われていることは私も知っていましたが、異なる種の間でフェロモンを使った情報戦が行われているとは思いもしませんでした。やはり自然界というのは奥が深いですね。


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