Massive Multiplayer Online Learning Game を略して MMOLG と呼ぶらしい。NASA の一部門である NASA Learning Technologies が、その MMOLG を開発することになり、アイデアを求めている。MMORPG 的な環境内で、Science, Technology, Engineering, and Mathematics の教育を行うのだそうだ。
それだけでは幅が広すぎてどういうものだかわからないが、NASA Learning Technologies は「どういうものにすればいいか」の情報を募る Request For Information を出している。募集されているのは
- MMO環境をどうデザインするべきか
- 既存の教育制度をどうサポートしていくか
- NASAの現在および将来のミッションとどう結びつけていくか
- NASAでのキャリアや STEM 教育の経験を MMO デザインに生かす方法
- MMO環境でのゲームプレイを参加者に提供する方法
ということなので、要するに「まだ何も決まっていない」わけで、とりあえずブレインストーミングしてみようという話らしい。
ちなみにこの NASA Learning Technologies は NASA World Wind の開発元である。
ところで私は、Second Life のように3Dグラフィックスのみで構成した仮想空間が教育上効果を上げるかという点については、かなり懐疑的だ。学校の教室で授業するのを仮想空間内の教室に移しただけでは、教育上の効果は何も無いだろう。
もちろん面白い可能性も考えられないことも無い。普段見えないようなものを見ることができるのは大きいかもしれない。例えば「蟻の巣を中から眺める」とか。あるいは物理定数の異なる空間での物体の挙動の物理シミュレーションを見せるとか。しかしそういった場合、マルチプレイヤー環境が必要なのか、という疑問は残る。
ゲームを教育に本当にうまく生かす方法は、視覚上の効果でも物理シミュレーションでも無いと私は考えている。ゲームがもっともよく向いているのは、社会的な教育においてだろう。
私が過去見た中で最も「教育的に良くできた」ゲームは、Chris Crawford の Balance of Power だ。あのゲームは、「世界平和を保つのは難しい」ことを教えるゲームだった。実際あのゲームをプレイすると、そのことを骨身に染みて理解できる。しかし同時に、「感情的にならずに冷静に物事を正しく判断すれば、世界平和を保つこともできないわけでもない」ということも学べる。そう言えば、このゲームについては少し前に ultraviolet が 2manji に書いていた。
他にも、株で儲けるのは簡単でないとか、会社を経営するのは簡単でないとか、環境保護と経済発展を両立させるのは簡単でないとか、要するに「現実世界の厳しさ」を教えるゲームこそ、最も高い教育的効果を発揮できる。
もちろん、そんなゲームが楽しいのかと言う話は確かにある。Balance of Power も、個人的にはゲームとして面白かったと思っているが、人によっては「すぐ核戦争でゲームオーバーになるから楽しくない」と感じるかもしれない。
逆に言うと、プレイヤーの方が「ゲームを通じて教育効果を上げられる人」と「そうでない人」に分かれるのかもしれない。
ゲームに現実逃避を求める人は結構いる。そういう人は、「ゲームを通じて学ぶ」ということが難しいかもしれない。
一方、ゲームをやりこんで上達することが快感だという人もいる。そういう人には、ゲームを通じて何かを訓練させることができるだろう。
また中には、ゲームを通じて物事をよりよく理解したがる人もいる。ヒストリカルなウォーゲームはもともとそのために作られたゲームだ。なぜ指揮官はあのときにあのように決断したのか。他に手は無かったのか。アマチュア歴史家は簡単に if を口にするが、実は他の道を選んでいたら悲惨な結果になっていたかもしれない。といったことを、ゲームなら実際に指揮官本人の立場で体験することができる。
と言った具合に、ゲームの役立て方は人により様々である。NASA の MMOLG がどのようなプレイヤーをターゲットにするかは興味深い。

