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承認欲求と所属欲求

written by duke on

Attribute=51 の ニコニコ動画が言い続けた「アンチ集合知」とは何だったのか をきっかけに、ニコニコ動画論とでも言うような議論があちこちで盛んなようだ。
実は先日 Scott Carp が twitter をやめた と宣言したポストを読んでから「twitter とニコニコ動画を巡る日米ユーザの考え方の違い」について書いてみようと準備中だったのだが、それにも関連する話なので、今回はニコニコ動画について書いてみる。

巷の議論では「承認欲求」という語ばかりが一人歩きしている感があるが、その語の捉え方には混乱があるようだ。一連の発端である ニコニコ動画が言い続けた「アンチ集合知」とは何だったのか を読む限り、コメントを書くユーザに対してニコニコ動画が提供するものは「承認欲求」よりも「所属欲求」とした方が正しい。
単に呼び方の問題と思われるかもしれないが、この二つを区別すると議論の見通しが格段に良くなるため、その違いについて説明しよう。

マズローの欲求段階説については検索すればいくらでも出てくると思うが、例えば Wikipedia 日本語版 を見てみよう。

親和(所属愛)の欲求
他人と関わりたい、他者と同じようにしたいなどの集団帰属の欲求
自我(自尊)の欲求
自分が集団から価値ある存在と認められ、尊敬されることを求める認知欲求 

この分類に当てはめて考えると、ニコニコ動画の与えるものが「親和/所属」の方であることは明らかだろう。心理学で言う 承認欲求 は、「親和/所属」ではなく「自我/自尊」の方に相当する。少し前に SNS の Second Orality が承認欲求を満足させる という話を紹介したことがあったが、その場合の承認欲求も自我/自尊の方である。一方 所属欲求 の方が「親和/所属」に相当する。

これに対して、ニコニコ動画におけるコンテンツ制作者は、コンテンツを作った個人としての自我/自尊欲求を満足できるため、「承認欲求」と呼ぶのが妥当である。
Attribute=51 の元記事は、この二つを区別せず同一視している。それによって「ニコニコ動画は承認欲求を満足させる」というわかりやすい結論を導いており、はてなブックマークで hotentry 入りしたのもその辺りのテクニックの勝利と言えるわけだが、これに続く議論を混乱させた面も否定できない。

ニコニコ動画が与えるものを、小飼弾氏は 忘我欲求である としているが、私もそれに同感だ。忘我欲求は、親和・所属欲求の特殊な形態だと考えられる。集団の中で自分の位置(居場所)を確保することが通常の親和・所属欲求だが、忘我欲求は集団に自分を溶け込ませる形になるため、居場所という概念自体が希薄になる。これについては nakanohito が 別の角度から言及 したこともある。

一方、シロクマの屑籠の 私達は、ニコニコ動画で集団的に承認欲求を備給する で展開されている小飼弾氏への反論も、「承認欲求」を「所属欲求」と言い換えさえすれば、これも全く正しい。次のように要約できよう。現在の日本社会では、多くの人は自我/自尊の欲求を満足させるのが無理なので、マズローの欲求段階説で一段下にあたる親和/所属愛の欲求で我慢するのだ と。

こう考えてくると、一つ疑問が沸いてくる。マズローの欲求段階説に従えば、所属欲求の満足された人は次には承認欲求を求めることになっている。はてしない物語 の終盤、イスカールで所属欲求を満たされたバスチアンが「個人として愛される」ことを求めたように。ニコニコ動画でコメントを書いているユーザも、次には個人としての自尊を求めるようになるのだろうか。そうだとしたら、承認欲求を満足させるためのサービスというのが次のブームになるのだろうか (それは前述したように SNS なのかもしれないが)。
もちろんマズローの説は現実とあまりよく合致していないと批判されることも多い。日本人にはそもそも個人と他人の区別が明確でないのでマズローの説が当てはまらないとの指摘もある(シロクマの屑籠もこちらの立場に近い)。しかしながら、所属欲求を満足したユーザが次に何かを求めるのか、それとも満足感の中にとどまり続けるのか、という点は、興味深い話である。


One Response to “承認欲求と所属欲求”

  1. trackback from BUROGU

    [しこう]どうでもよくなってしまう…

     ウンコの話。便意がまだ深刻なレベルではない時は、なるべくならキレイなトイレ、あわよくばウォシュレットとかが備え付けてあるトイレで用を足したいものだが、便意が切羽詰っ…

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