強いレーザー光をフェムト秒(千兆分の1秒)単位のごく短い時間だけ照射すると、人間の体細胞をほとんど傷つけずにウィルスだけを死滅させることができる、という話が WIRED で紹介されています。
ウィルスというものは、タンパク質の殻の中にDNAやRNAが入っているという構造をしています。この殻の部分は、カプソマーと呼ばれる小さなタンパク質が集まって構成されています。同一種類の小さなタンパク質だけで均等に構成されているというのはウィルスの特徴で、細胞構造を持つ通常の生物には見られません。
フェムト秒レーザーはこのカプソマーを狙い撃ちにします。分子量の小さいカプソマーには吸収スペクトルが決まっているので、その周波数の光を当てると、すぐに励起して、数フェムト秒の間に破壊されてしまいます。そしてフェムト秒しか照射しなければ、その他の分子にはたいして吸収されませんから、カプソマー以外には害を与えない、ということになります。
ウィルスにあって高等生物に無いものを狙うというのは抗ウィルス薬の基本で、これまでも酵素を阻害する薬が開発されてきましたが(AZTとか)、構造そのものを狙い撃ちにするというのはなかなかの発想です。
これまでのところ、この手法でタバコモザイク病ウィルスを殲滅できることが確認できており、次はHIVやC型肝炎ウィルスでの確認ということになりそうです。それができれば、献血された血液をレーザー消毒できる、ということになります。これがあと四半世紀早く開発されていたら、薬害AIDSやC型肝炎の感染拡大も起きずに済んでいたのかもしれません。
人体への直接の応用はまだしばらく先になりそうです。人体に外からレーザーを当てて、というのはなかなか厳しいでしょうし。ただ、例えば人工透析のような形で、血液をいったん体外に出してレーザーを照射・消毒して体内に、という治療は可能かもしれません。HIV感染初期の患者に適用する治療としては一定の効果がありそうな気がします。


November 3rd, 2007 at 9:43
集合知の面白さ…
へえ、こんなサービスがあるのか。他人事だけどちょっと他人事じゃない話なので興味深い。 人工透析 – Wikipedia p. また、近年では透析患者専用の旅行ツアーを用意している旅行代理店も…